「無病」なカラダのつくり方

渡辺佳子 / サンマーク出版 / 2008/08

「無病」なカラダのつくり方

目次

  • 第1章 健康に生きる「無病」という新しい考え方 
  • 第2章 経絡リンパマッサージで「無病」を実現する
  • 第3章 経絡リンパマッサージの基本テクニック
  • 第4章 春のカラダづくり 新暦2月4日頃~5月6日頃
  • 第5章 夏のカラダづくり 新暦5月6日頃~8月8日頃
  • 第6章 長夏のカラダづくり 新暦7月23日頃~9月8日頃
  • 第7章 秋のカラダづくり 新暦8月8日頃~11月7日頃
  • 第8章 冬のカラダづくり 新暦11月7日頃~2月4日頃
  • 第9章 カラダが変わると生き方も変わる

まえがき

「無病」なカラダづくりで、幸せに生きる

最近、私たちの治療院にいらっしゃる方で多い症状は、なんとなくカラダがだるい、眠れないとか、首や肩のこりがひどい、むくみや冷えが現れるとかいうもの。

病気までいたらないけれど、カラダに小さな違和感を覚える不調です。

多くの皆さんは、この段階でまずは病院の検査に行かれます。いろいろな病院のあらゆる診療科目を受診する、いわゆる病院ショッピングをする人もいます。

しかし、どこの病院や医師にも

「検査しましたが、とくに悪いところはないようですね。もう少し様子をみましょうか」

と言われ、簡単に診断がくだされてしまうことが多いようでした。

とりわけ西洋医学では、検査値が基準値を超えたり、レントゲンや内視鏡の検査で異常がみつかったりしなければ病名はつけません。

私たちの治療院では、これらのカラダの不調をひとつの「現代病」と考えています。

東洋医学では、このような半健康状態を「未病」と呼んでいます。いわゆる病気の症状がはっきり検査値で表れなかったり、病名がつかなかったりする状態で、冷え、こりむくみなどをはじめ、カラダのどこかに違和感を覚える体調不良のことです。

一般的には、わずかな体調不良を抱えていても、また、肩こりがつらい、疲れやすいと嘆くことはあっても、それを病気だとは思っていない人がほとんどではないでしょうか。

しかし、健康と病気の狭間にある「未病」という期間のささやかな体調の変化に対しても、東洋医学の症候分類では「証(治療方針)」が立ちます。カラダの小さな違和感は病気のはじまりとみなし、その症状に合わせて治療を開始します。

私は現代の治療にもっとも欠かせないことは、このようなカラダに小さな違和感が表れた患者さんの、カラダとココロをトータルで診ることだと考えています。そして、こうした「未病」のサインを感じたら、その段階から早めにケアをすることが重要なのです。

残念ながら、多くの皆さんは、はっきりご自身で病気だと自覚するまで病院に行かないのも事実です。でも、病名が告げられてからのケアでは、手遅れな状態だったり、回復までにかなりの時間がかかってしまうということも起こりかねません。

さらに、ここ数年治療をしていて、とくに増えてきていると感じる症状があります。

それは、人間の能力のなかでも季節に適応する力が弱くなってきたことです。地球温暖化や世界的な異常気象による気温の変化、また、冷暖房機器の普及により、冬に夏の影響、夏に冬の影響などと、心身に不調を受けている人が多くなっています。

治療にいらっしゃる方のなかにも、すでに冬の初めから花粉症の症状を訴えたり、春先からむくみやのぼせの症状が出たり、夏に冷えや肌の乾燥の症状を訴えたりするなど、季節の変化に対応できないために体調不良のケアを希望する人が少なくありません。

これは女性に限らず男性にも増えてきています。これらの症状が慢性化すると、ほかの病気を誘発することもあります。症例を紹介すると、夏に生じた冷えは、寒い季節の冷えよりも慢性化しやすく、肥満をはじめ内臓などの病気の引き金になる可能性もあります。

異常気象で季節が乱れれば、生じやすい症状にも季節感がなくなっていくのは当然だとしても、それ以上に、多くの人たちが季節によって毎年起こるご自身の症状に気づかなくなったことのほうが、問題なのだと私は思っています。

現代を生きる私たちのカラダには、知らず知らずのうちに毎年同じ時期に同じ不調が起きてしまうことが増えてきました。

また、社会環境やライフスタイルの大きな変化によって、昔はなかったはずの病気が近年になって増加傾向を示し、症状も多様化してきています。

たとえば、アトピー性皮膚炎や花粉症、食物アレルギー、化学物質過敏症などのいわゆるアレルギー性疾患。また、不眠、倦怠感、イライラの症状などをはじめとする自律神経失調症は、三十年くらい前から耳にするようになった病名です。

それに関連して、心身症やうつ病、パニック障害などに悩まされている人たちも増えていると聞きますこのように時代時代で病気の種類や症状も変化しながら、私たちのカラダにさまざまな不調を及ぼしています。

では、いきいきと元気で健康な一生を送るには、どうすればよいのでしょうか。

そのひとつの方法が、季節ごとにカラダから発せられる小さな違和感のサインに合わせたケアを毎日続けることです。それによって「未病」を改善し、病気を寄せつけないカラダ、つまり「無病」なカラダに戻すこともできるのです。

本書で紹介する、季節の変化に応じた経絡リンパマッサージの目的は「無病」です。

病気を寄せつけない「無病」なカラダづくりのためのマッサージを継続して行うことは、毎年繰り返す慢性的な体調不良の改善や病気の予防、再発の防止などにつながります。

つねに心身をベストな状態にキープすることができれば、幸せな毎日、ココロ豊かな生き方、最高の人生につながると思います。

ご自身のカラダに合った「無病」生活、「無病」人生。それが、これからの時代にいちばん求められている生き方ではないでしょうか。

私たちにとって生きていくうえでもっとも基本となるカラダ。一生のパートナーでもある大切なカラダ。皆さんのこれからの健康と美しき人生を願って、季節の変化に合わせた「無病」のためのカラダのつくり方をご紹介いたします。

本の内容

毎日を、美しく健康に、優雅に生きる。「手当て」は、自分でできる究極の美容&健康法!
製作に実に3年の歳月を費やした本がここに完成!222ページ、ハードカバータイプで、東洋医学の真髄である「予防医学」を日本の四季に応じたケア方法を1冊の本にまとめました。

四季に応じた春には春の、冬には冬のマッサージ法があります。「無病」すなわち、病気のないカラダを維持するための色々なテクニックが満載です。

経絡とは何か

ツボ 無病なカラダの作り方 内容

胃腸が弱い ストレス 無病なカラダの作り方 内容

胃腸を整えるマッサージ 夏のカラダの作り方 無病なカラダの作り方 内容

あとがき

いつまでも元気に、楽しい人生を送るために

  • これから、あなた自身、あなたの愛する方と、どんな人生を過ごしていきたいですか?

この本を手にとっていただき、最後まで読んでいただいたことに感謝いたします。

私がこの業界に入ったきっかけは、当時父のような存在だった大切な祖父を病気で亡くし、「なぜ、もっと早く気づいてあげられなかったのか」と、無念の想いと自分の無力さを後悔したことにあります。そばにいても、病気で苦しんでいた祖父に、私は背中をさすったり、手を握ったりすることしかできませんでした。

祖父の死後、「なぜ病気になる前に、もっと早く救えなかったのか」という想いでいっばいでした。人の命のはかなさを感じました。

人は、いつかは死んでいきますが、生きている時間は、大切な人と幸せに過ごしたい、病気で失いたくないという願いが日ごとに強まりました。家族のためだけではなく、まわりの大切な誰かをサポートするために生きていきたいという想いが私の中で生まれたのです。

そして、「病気にならないためにケアをする」という予防医学の考え方に基づいた、東洋医学の道に進もうと決意を固めました。

祖父の死と、生前祖父が私に残してくれた「人の役に立つ仕事をしなさい」という言葉が、今の私の生き方に導いてくれました。そして、鍼灸マッサージを通じて、多くの方々の役に立ち、幸せな人生の応援をすることに使命を感じています。

加速化されたストレス社会の現代。人はストレスにさらされ、自分でも気づかぬうちにカラダをこわしています。不調を抱えた方々が、日々私たちの治療院を訪れます。

とてもひどい状態になっていたり、意外と自分の状態に気づいていなかったりする方も多いのが現状です。こりやむくみ、冷えなどの身近な不調の症状は、実はカラダからのSOSのサインです。

今回、この本のテーマとした「無病」とは、カラダに不調の症状がひとつもないということ。世の中の皆さんに、病気や不調を抱えたままでいる辛い時間は、なるべく起こらない人生を過ごしていただくこと、元気で幸せな時間を長く過ごしていただくことが、私の心からの願いです。

元気にきれいに、幸せに生きていくひとつの方法として私が提案しているのが、マッサージによるセルフケアです。

現在、カルチャーセンターや私たちのスクールで行っているセルフケア講座を受講された方、また私のこれまでの著書を見てセルフケアを行っていただいている方から、たくさんの喜びの声をいただいています。なかには、重症な病気が改善されたという声も聞かれます。

私たちが行う治療において、効果が出るのはプロとして当たり前のことですが、自分で行っていただくセルフケアだけでも、毎日正しく行うことで予想以上の効果が出ています。また、最近は私の海外版の書籍を見て、日本だけではなく、世界でもマッサージによるセルフケアは行われているようです。

セルフケアを始めてから、疲れづらくなって元気になった方、やせてきれいになった方、精神的な面でも明るくなった方、ご自分で早期にがんを発見されてお元気になられた方など、多くの方々が良い効果を実感されています。セルフケアがたくさんの方々に役立っているというお話は、私にとってとてもうれしいことです。

便利な機械やITの普及などで、人とのつながりが希薄になったデジタル化時代に、私はあえてアナログ的かもしれませんが、人間の本質に帰ったマッサージを提唱します。

マッサージは、自然や人との関係が希薄になりがちな今、人々が求める最も本質的な治療法だと思います。マッサージの原点は、「手当て」にあります。それは医療の原点であり、深い愛情と人を大切にしたいと思う、やさしい気持ちから生まれる本能に近い行動だと思います。生きている存在を、ありがたいと感謝できたときに表れる気持ちでもあります。

日々、自分のカラダに愛情をかけてあげてください。そして、家族や恋人、大切な人にも愛情をかけてあげてください。「無病」人生ーー。それは早めに自分のカラダの変化や不調に気づき、ケアを始めることからスタートします。カラダが変わると、生き方、さらに人生までも変わります。

限りある人生を、どのように生きていくのか。今をともに生きる、大切な愛する人たちと、健康で幸せな人生を過ごすために、ぜひ今日からマッサージによるセルフケアを始めてみてください。

この本をご覧いただいた方の幸せのために、少しでもお役に立てれば幸いです。これからの皆さまの「無病」で楽しい人生をお祈りしております。

最後に、この本を出版するにあたり、サンマーク出版の高橋編集長や梶原様をはじめ、中村様や多くのスタッフの皆さま、構想から三年間という長い期間をご協力いただいた方々に感謝し、心よりお礼を申し上げます。